Classici giapponesi con furigana
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きくづきよ
菊月夜
山本 周五郎
Leggi 菊月夜 (きくづきよ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 16.129 caratteri · 32 schermate
「こちらに迷惑をかけまいという心遣いですね……」信三郎は暗然と眼を伏せた。「よくわかりました、しかし疋田とのはなしは、少し考えさせて頂きます」
「それはいずれ父上から、改めておはなしがあるでしょうけれど……」
そういって母親は、心のこりそうに立っていった。信三郎はいろいろの感慨に胸を塞がれた、彼は小房に二度しか会っていないが、陶器のように艶つやとした頬と、こちらを見るときぱちぱちと目叩きする上眼づかいの賢そうな眸子とは、いまでもかなり鮮やかな印象としてのこっている、……あの眸子は、いまどこでなにを見ているだろう、今でもあのように目叩きをするだろうか、不幸はいつも思い設けぬところに起る、ずいぶん身を戒しめ要慎をしていても、それは不意にやってきて人を掴む、その運命をひき裂いて谷底へとつき墜とす、あの人はどんな気持で不幸に堪えようとしているだろう、その力があるだろうか。信三郎はできることなら探し求めて会い、心から慰め励ましてやりたいという衝動をするどく感ずるのだった。
父からはなしのあるまえに、重臣のひとり安倍孫太夫に招かれた。孫太夫は重臣のいえがらであるがまだ三十歳で、二年まえに江戸から国詰となり、奉行役支配の席にいた。