Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
なおこ
菜穂子
堀 辰雄
Leggi 菜穂子 (なおこ) di 堀 辰雄 (ほりたつお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 88.758 caratteri · 173 schermate
外で払って来たらしい雪がまだ一面に残っている外套を着た儘、圭介が彼女を見下ろしながら、其処に立っていた。
菜穂子はかすかなほほ笑みを浮べながら、会釈するともなく、圭介のために身じろいだ。
圭介は不機嫌そうに彼女の前に腰をかけたきり、暫くは何も云い出さずにいた。
「いきなり新宿駅から電話をかけて寄こすなんて驚くじゃないか。一体、どうしたんだ?」とうとう彼は口をきいた。
菜穂子はしかし、前と同じようなかすかなほほ笑みを浮べたきり、すぐには何んとも返事をしなかった。彼女の心の内には、一瞬、けさ吹雪の中を療養所から抜け出して来た小さな冒険、雪にうずもれた山の停車場での突然の決心、三等車の中に立ちこめていた生のにおいの彼女に与えた不思議な身慄い、――それらのものが一どきによみ返った。彼女はその間の何かに憑かれたような自分の行動を、第三者にもよく分かるように一々筋を立てて説明する事は、到底出来ないように感じた。
彼女はそれが返事の代りであるように、只大きい眼をして夫の方をじいっと見守った。何も云わなくとも、その眼の中を覗いて何もかも分かって貰いたそうだった。