Classici giapponesi con furigana
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おちてゆくせかい
落ちてゆく世界
久坂 葉子
Leggi 落ちてゆく世界 (おちてゆくせかい) di 久坂 葉子 (くさかようこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.725 caratteri · 40 schermate
ある日――
足音をしのばせて私は玄関から自分の居間にはいり、いそいで洋服をきかえると父の寐ている部屋の襖をあけました。うすぐらいスタンドのあかりを枕許によせつけて、父はそこに喘いでおります。持病の喘息が、今日のような、じめじめした日には必ずおこるのです。秋になったというのに、今年はからりと晴れた日はまだ一日もなく、なんだか、あついような、そして肌寒い毎日でありました。
「唯今かえりました。おそくなりまして。いかがでございますか……」
父は黙って私の顔をみつめております。私は父のその目付を幾度もうけて馴れておりますものの、やはりそのたびに一応は、恐れ入る、という気持になって、丁寧に頭をさげます。そして、ぎごちなく後ずさりをして部屋を出ました。
つめたい御飯がお櫃の片側にほんの一かたまり。それに大根の煮たのが、もう赤茶けてしるけもなくお皿にのっております。土びんには、これもまたつめたい川柳のお茶がのこりすくなくはいっております。私はいそいでお茶漬けにして、食事を済ませました。胃のなかに、かなしいほどつめたいものが大いそぎでおちこんだという感じがします。