Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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おちばいき

落ち梅記

山本 周五郎

Leggi 落ち梅記 (おちばいき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 30.748 caratteri · 61 schermate

Aozora Bunko

すぐに拾ったけれど、顔色がすっと白くなり、箸を持ったままの右手をけげんそうに見まもった。

「どうかなすったのですか」

妻の茂登がそうきいた。助左衛門はいやと首を振って食事を続けたが、暫くするとまた箸がぽろっと手から落ちた。金之助はどきっとした、茂登もあと低くこえをあげた。

「おかしいな、――痺れる」

助左衛門はこう呟きつつ、右手をひらいたり握ったりしていたが、とにかく横になろうと云って膳の前を立った。それを寝所へ送ってから、金之助はすぐ医者を呼びにやった。渋沢良石といって、殿さまの侍医であるが、来て診察の結果は軽い卒中だということであった。

「過労でございますね、ごく軽い発作ですから五七日も安静になすったら治りましょう、決して御心配には及びません」

ただ安静を固くまもること、食事はこれこれと細かに注意をし、あとから薬を届けると云って医者は帰った。右手の先が少し痺れるだけで、ほかに異常がないから、医者の云うとおりごく軽症なのではあろう。しかし「卒中」という病名が当人よりも家族に大きな不安と驚きを与えた。助左衛門はそれを察したとみえ、しいて笑いながら、「そんなに心配することはないよ、良石老のみたてなら大丈夫、まだ五年や八年は倒れはしない、今おれにはそんな暇はないんだから」