Classici giapponesi con furigana
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いっぺいそつ
蒲団・一兵卒
田山 花袋
Leggi 蒲団・一兵卒 (いっぺいそつ) di 田山 花袋 (たやまかたい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 28.948 caratteri · 59 schermate
五官のほかにある別種の官能の力が加わったかと思った。暗かった室がそれとはっきり見える。暗色の壁に添うて高いテーブルが置いてある。上に白いのは確かに紙だ。ガラス窓の半分が破れていて、星がきらきらと大空にきらめいているのが認められた。右の一隅には、何かごたごた置かれてあった。
時間の経っていくのなどはもうかれにはわからなくなった。軍医が来てくれればいいと思ったが、それを続けて考える暇はなかった。新しい苦痛が増した。
床近く蟋蟀が鳴いていた。苦痛に悶えながら、「あ、蟋蟀が鳴いている……」とかれは思った。その哀切な虫の調べがなんだか全身に沁み入るように覚えた。
疼痛、疼痛、かれはさらに輾転反側した。
「苦しい! 苦しい! 苦しい!」
続けざまにけたたましく叫んだ。
「苦しい、誰か……誰かおらんか」
としばらくしてまた叫んだ。
強烈なる生存の力ももうよほど衰えてしまった。意識的に救助を求めると言うよりは、今はほとんど夢中である。自然力に襲われた木の葉のそよぎ、浪の叫び、人間の悲鳴!
「苦しい! 苦しい!」
その声がしんとした室にすさまじく漂い渡る。この室には一月前まで露国の鉄道援護の士官が起臥していた。