Classici giapponesi con furigana
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ばらふじん
薔薇夫人
江戸川 乱歩
Leggi 薔薇夫人 (ばらふじん) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 8967 caratteri · 19 schermate
情慾に光りかがやいている。青年は、あの美しい女に呑まれたいと思った。鯨に呑まれるように、腹の中へ呑まれたいと思った。
本当をいうと、彼は少年時代から、この幻想に憑かれていた。夢にもよく見た。中学校の集団旅行で、奈良の大仏を見たときには、恍惚として目がくらみそうになった。鎌倉の大仏はもっと実感的であった。あの体内へはいった時の気持が忘れられないで、ただそれだけのために、三度も四度も鎌倉へ行ったほどだ。あの中に住んでいられたら、どんなによかろうと思った。
「いよいよ、おれもせっぱつまったなあ。自殺する時が来たのかな」
青山浩一は、絶えず心の隅にあったことを、口に出して云って見た。彼には、温泉めぐりをしているあいだも、この金を遣いはたしたら自殺だという想念が常にあった。その想念には何か甘い味があった。
じっと前の海を見つめていたが、飛び込む気には、なれなかった。いよいよのどたんばまでには、まだ少しあいだがあると思った。その一寸のばしが、目覚し時計の音をきいてから、蒲団の中にもぐっているように、何とも云えず物憂く、ここちよかった。
もう海と空の見さかいがつかぬほど、暗くなっていた。