Classici giapponesi con furigana
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かいろこう
薤露行
Leggi 薤露行 (かいろこう) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.925 caratteri · 40 schermate
思わぬ人の誰なるかを知りたる時、天が下に数多く生れたるもののうちにて、この悲しき命に廻り合せたる我を恨み、このうれしき幸を享けたる己れを悦びて、楽みと苦みの綯りたる縄を断たんともせず、この年月を経たり。心疚ましきは願わず。疚ましき中に蜜あるはうれし。疚ましければこそ蜜をも醸せと思う折さえあれば、卓を共にする騎士の我を疑うこの日に至るまで王妃を棄てず。ただ疑の積もりて証拠と凝らん時――ギニヴィアの捕われて杭に焼かるる時――この時を思えばランスロットの夢はいまだ成らず。
眠られぬ戸に何物かちょと障った気合である。枕を離るる頭の、音する方に、しばらくは振り向けるが、また元の如く落ち付いて、あとは古城の亡骸に脈も通わず。静である。
再び障った音は、殆んど敲いたというべくも高い。慥かに人ありと思い極めたるランスロットは、やおら身を臥所に起して、「たぞ」といいつつ戸を半ば引く。差しつくる蝋燭の火のふき込められしが、取り直して今度は戸口に立てる乙女の方にまたたく。乙女の顔は翳せる赤き袖の影に隠れている。面映きは灯火のみならず。
「この深き夜を……迷えるか」と男は驚きの舌を途切れ途切れに動かす。