Classici giapponesi con furigana
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くすりゆびのまがり
薬指の曲り
田中 貢太郎
Leggi 薬指の曲り (くすりゆびのまがり) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2603 caratteri · 6 schermate
「昨夜も来たが、お前には逢わなかった」
と、人懐い声で云いました。其の声が濁りのある山田先生とちがっているので、其の顔を見ると、顔ははっきりとしませんが、白い顔で、薄い口髯がありました。
「だいじの病気じゃ、好い薬を持って来たから、飲むが好い」
と、医師は云いました。すると、母が小さな声で、
「山田先生の薬が好い、山田先生の薬なら飲みたい」
と云いました。私が母が人の親切を無にするように思いましたから、
「お母さん、先生がああ仰っしゃるから、飲んだら好いじゃありませんか」
と云いました。それでも母は、
「私は山田先生の薬を飲んでおりますから、他の人の薬は飲みません」
と云って、頭を動かすようにしました。私は頑固な母が憎くなりました。
「お母さん、そんなばかなことを云うものじゃありませんよ」
と云いました。と、医師は私の方を見て、
「じゃ、私は此処へ薬をこしらえて置くから、お前が飲ますが好い、これを飲むとすぐ癒るから」
と云って、薬籠を膝の上に執って、それを開け、中から何か薬をだして、それを紙片に入れかけました。行灯の光がほっかりと膝の上にありました。私は先生がどんな薬を出すだろうと思って、其の方を見ておりましたが、私の眼は、ふと医師の右の手の薬指に吸いつけられました。