Classici giapponesi con furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Leggi 虞美人草 (ぐびじんそう) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 198.559 caratteri · 401 schermate
一睛を暗所に点ぜず、藤尾は眼を上げなかった。ただ畳に落す靴足袋の先をちらりと見ただけでははあと悟った。小野さんは座に着かぬ先から、もう舐められている。
「今日は……」と座りながら笑いかける。
「いらっしゃい」と真面目な顔をして、始めて相手をまともに見る。見られた小野さんの眸はぐらついた。
「御無沙汰をしました」とすぐ言訳を添える。
「いいえ」と女は遮った。ただしそれぎりである。
男は出鼻を挫かれた気持で、どこから出直そうかと考える。座敷は例のごとく静である。
「だいぶ暖かになりました」
「ええ」
座敷のなかにこの二句を点じただけで、後は故のごとく静になる。ところへ鯉がぽちゃりとまた跳る。池は東側で、小野さんの背中に当る。小野さんはちょっと振り向いて鯉がと云おうとして、女の方を見ると、相手の眼は南側の辛夷に注いている。――壺のごとく長い弁から、濃い紫が春を追うて抜け出した後は、残骸に空しき茶の汚染を皺立てて、あるものはぽきりと絶えた萼のみあらわである。
鯉がと云おうとした小野さんはまた廃めた。女の顔は前よりも寄りつけない。――女は御無沙汰をした男から、御無沙汰をした訳を云わせる気で、ただいいえと受けた。