Classici giapponesi con furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Leggi 虞美人草 (ぐびじんそう) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 198.559 caratteri · 401 schermate
実は夕食もまだ食わない。いれば耳を傾けたくない話が出る。腰だけはとうから宙に浮いている。しかし先生の様子を見ると無理に洋袴の膝を伸す訳にもいかない。老人は病を力めて、わがために強いて元気をつけている。親しみやすき蒲団は片寄せられて、穴ばかりになった。温気は昔の事である。
「時に小夜の事だがね」と先生は洋灯の灯を見ながら云う。五分心を蒲鉾形に点る火屋のなかは、壺に充る油を、物言わず吸い上げて、穏かなの舌が、暮れたばかりの春を、動かず守る。人佗て淋しき宵を、ただ一点の明きに償う。燈灯は希望の影を招く。
「時に小夜の事だがね。知っての通りああ云う内気な性質ではあるし、今の女学生のようにハイカラな教育もないからとうてい気にもいるまいが、……」まで来て先生は洋灯から眼を放した。眼は小野さんの方に向う。何とか取り合わなければならない。
「いいえ――どうして――」と受けて、ちょっと句を切って見せたが、先生は依然として、こっちの顔から眸を動かさない。その上口を開かずに何だか待っている。
「気にいらんなんて――そんな事が――あるはずがないですが」とぽつぽつに答える。ようやくに納得した先生は先へ進む。