Classici giapponesi con furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Leggi 虞美人草 (ぐびじんそう) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 198.559 caratteri · 401 schermate
栄誉を冀うものは必ずこの色を撰む。盛名を致すものは必ずこの色を飾る。磁石の鉄を吸うごとく、この色はすべての黒き頭を吸う。この色の前に平身せざるものは、弾力なき護謨である。一個の人として世間に通用せぬ。小野さんはいい色だと思った。
折柄向う座敷の方角から、絹のざわつく音が、曲がり椽を伝わって近づいて来る。小野さんは覗き込んだ眼を急に外らして、素知らぬ顔で、容斎の軸を真正面に眺めていると、二人の影が敷居口にあらわれた。
黒縮緬の三つ紋を撫で肩に着こなして、くすんだ半襟に、髷ばかりを古風につやつやと光らしている。
「おやいらっしゃい」と御母さんは軽く会釈して、椽に近く座を占める。鶯も鳴かぬ代りに、目に立つほどの塵もなく掃除の行き届いた庭に、長過ぎるほどの松が、わが物顔に一本控えている。この松とこの御母さんは、何となく同一体のように思われる。
「藤尾が始終御厄介になりまして――さぞわがままばかり申す事でございましょう。まるで小供でございますから――さあ、どうぞ御楽に――いつも御挨拶を申さねばならんはずでございますが、つい年を取っているものでございますから、失礼のみ致します。