Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ぐびじんそう

虞美人草

夏目 漱石

Leggi 虞美人草 (ぐびじんそう) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 198.559 caratteri · 401 schermate

Aozora Bunko

六人の目はことごとく紫の絹紐にあつまる。

「やあ、御帰り」と宗近君が煙草を啣えながら云う。藤尾は一言の挨拶すら返す事を屑とせぬ。高い背を高く反らして、屹と部屋のなかを見廻した。見廻した眼は、最後に小野さんに至って、ぐさりと刺さった。小夜子は背広の肩にかくれた。宗近君はぬっと立った。呑み掛けの煙草を、青葡萄の灰皿に放り込む。

「藤尾さん。小野さんは新橋へ行かなかったよ」

「あなたに用はありません。――小野さん。なぜいらっしゃらなかったんです」

「行っては済まん事になりました」

小野さんの句切りは例になく明暸であった。稲妻ははたはたとクレオパトラの眸から飛ぶ。何を猪子才なと小野さんの額を射た。

「約束を守らなければ、説明が要ります」

「約束を守ると大変な事になるから、小野さんはやめたんだよ」と宗近君が云う。

「黙っていらっしゃい。――小野さん、なぜいらっしゃらなかったんです」

宗近君は二三歩大股に歩いて来た。

「僕が紹介してやろう」と一足小野さんを横へ押し退けると、後から小さい小夜子が出た。

「藤尾さん、これが小野さんの妻君だ」

藤尾の表情は忽然として憎悪となった。憎悪はしだいに嫉妬となった。