Classici giapponesi con furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Leggi 虞美人草 (ぐびじんそう) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 198.559 caratteri · 401 schermate
二階の書生がヴァイオリンを鳴らし始めた。小野さんも近日うちにヴァイオリンの稽古を始めようとしている。今日はそんな気もいっこう起らぬ。あの書生は呑気で羨しいと思う。――椿の花片がまた一つ落ちた。
一輪挿を持ったまま障子を開けて椽側へ出る。花は庭へ棄てた。水もついでにあけた。花活は手に持っている。実は花活もついでに棄てるところであった。花活を持ったまま椽側に立っている。檜がある。塀がある。向に二階がある。乾きかけた庭に雨傘が干してある。蛇の目の黒い縁に落花が二片貼ついている。その他いろいろある。ことごとく無意義にある。みんな器械的である。
小野さんは重い足を引き擦ってまた部屋のなかへ這入って来た。坐らずに机の前に立っている。過去の節穴がすうと開いて昔の歴史が細長く遠くに見える。暗い。その暗いなかの一点がぱっと燃え出した。動いて来る。小野さんは急に腰を屈めて手を伸ばすや否や封を切った。
「拝啓柳暗花明の好時節と相成候処いよいよ御壮健奉賀候。小生も不相変頑強、小夜も息災に候えば、乍憚御休神可被下候。さて旧臘中一寸申上候東京表へ転住の義、其後色々の事情にて捗どりかね候所、此程に至り諸事好都合に埓あき、いよいよ近日中に断行の運びに至り候はずにつき左様御承知被下度候。