Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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むし

虫

江戸川 乱歩

Leggi 虫 (むし) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 44.053 caratteri · 86 schermate

Aozora Bunko

併し、それは烈しい驚きではあっても、決して悔恨ではなかった。世の常ならぬ愛慾の鬼奴が、彼を清玄の様に、執拗な恥しらずにしてしまった。

彼は不様な格好で、這いつくばい、壁に鼻の頭をすりつけて、辛棒強く、小さな穴を覗き込むのだが、その向う側には、凡そ奇怪で絢爛な、地獄の覗き絵がくりひろげられていた。毒々しい五色のもやが、目もあやに、もつれ合った。ある時は、芙蓉のうなじが、眼界一杯に、つややかな白壁の様に拡がって、ドキンドキンと脈をうった。ある時は、彼女の柔かい足の裏が真正面に穴を塞いで、老人の顔に見えるそこの皺が、異様な笑いを笑ったりした。だが、それらのあらゆる幻惑の中で、柾木愛造を最も引きつけるものは、不思議なことに、彼女のふくらはぎに、一寸ばかり、どす黒い血をにじませた、掻き傷の痕であった。それはひょっとしたら、池内の爪がつけたものだったかも知れぬけれど、彼の目の前に異様に拡大されて蠢いていた、まぶしい程つややかな、薄桃色のふくらはぎと、その表面を無残にもかき裂いた、生々しい傷痕の醜くさとが、怪しくも美しい対照を為して、彼の眼底に焼きついたのであった。