Classici giapponesi con furigana
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むし
虫
江戸川 乱歩
Leggi 虫 (むし) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 44.053 caratteri · 86 schermate
柾木が予期した通り、これこそ屈強の犯罪舞台であった。
彼は車道の片側へ車を寄せて、突然停車すると、目に見えぬす早さで、運転台を飛び降り、客席に躍り込んで、ピッシャリと中から扉をしめた。そこは丁度露店の焼鳥屋のうしろだったし、仮令見た人があったところで、完全にシェードが下りているのだから、客席内の様子に気づく筈はなかった。
躍り込むと同時に、彼は芙蓉の喉を目がけて飛びついて行った。彼の両手の間で、白い柔いものが、しなしなと動いた。
「許して下さい。許して下さい。僕はあなたが可愛いのだ。生かして置けない程可愛いのだ」
彼はそんな世迷い言を叫びながら、白い柔いものを、くびれて切れてしまう程、ぐんぐんとしめつけて行った。
芙蓉は、運転手だと思い込んでいた男が、気違いの様に血相をかえて飛び込んで来た時、殺される者のす早い思考力で、咄嗟に柾木を認めた。だが、彼女は、悪夢の中での様に、全身がしびれ、舌が釣って、逃げ出す力も、助けを呼ぶ力もなかった。妙なことだけれど、彼女は大きく開いた目で、またたきもせず柾木の顔を見つめ、泣き笑いの様な表情をして、さあここをと云わぬばかりに、彼女の首をグッと彼の方へつき出したかとさえ思われた。