Classici giapponesi con furigana
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じゃせいのいん
蛇性の婬
田中 貢太郎
Leggi 蛇性の婬 (じゃせいのいん) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 26.880 caratteri · 54 schermate
女はそう云って鞋を穿いて小婢といっしょにあがって往った。許宣もその後からあがったがそれは赤脚のままであった。
もう日没になっているのか四辺が灰色になって見えた。女は許宣のあがって来るのを楊柳の陰で待っていた。
「あの、なんですけど、雨もこんなに降りますし、もう日も暮れかけてますから、私の家へまいりましょうじゃありませんか、拝借したお銭もお払いしとうございますから」
許宣は女の家へも往きたかったが、姐の家に気がねがあるので往けなかった。
「もう遅うございますから、またこの次に伺います」
「そうですか、……それでは、また、お眼にかかります、どうも有難うございました」
女はのこり惜しいような顔をして別れて往った。小婢は包を持って後から歩いていた。許宣ものこり惜しいような気がするので、そのまま立っていて今度見直すと、二人の姿はもう見えなかった。許宣は気が注いて船頭に一言二言別れの詞をかけ、楊柳の陰から走り出て湧金門を入って、ぎっしり簷を並べた民家の一方の簷下を歩いた。彼はそうして近くの親類へ往って傘を借りようとしているのであった。彼の眼の前にはさっきの女の姿が花のように映っていた。