Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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くも

蜘蛛

豊島 与志雄

Leggi 蜘蛛 (くも) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 3640 caratteri · 8 schermate

Aozora Bunko

トルストイやバルザックやセークスピアの偉大さは、そういう力に依ってるところが多い。トルストイが如何に無抵抗の宗教を説こうと、彼の力は畢竟肉食的な野蛮な力の上に立っている。――蜘蛛にはそういった野性がある。彼が如何に精巧な巣を張ろうと、如何に過敏な神経を持っていようと、それは到底文明的な所産ではない。文明的な所産となりきれないほど、彼のうちには肉食的な野性がある。細い糸に懸って空に浮んでいても、地を這う虫けらよりも、遙に大地的であり遙に野性的である。

昔の人は、自然に対して一種の神秘的な恐怖を懐いた。そこから、自然力崇拝の宗教まで生れた。然るに、人間の数が増し文明が進むにつれて、そういう宗教は、そういう神秘的恐怖は、遠く山間僻地へ追いやられて、跡を絶とうとしている。けれども文明のさなかにも、都会の真中にも、ふとその痕跡が見出されることがある。――蜘蛛はその一つである。薄暗い土蔵の二階、物置の片隅、階段の裏などに、大きな蜘蛛の巣が張られていて、その真中にあの不気味な怪物が控えている時、人の心には知らず識らず、一種の神秘な恐れが湧いてくる。妖怪屋敷や廃墟壊屋に、いつも蜘蛛の巣がつきものとなっているのは、自然そのままの現象ではあるが、また人の心の自らなる連想作用でもある。