Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

ちまんだらしちょうぶし

血曼陀羅紙帳武士

国枝 史郎

Leggi 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 88.970 caratteri · 176 schermate

Aozora Bunko

(わしの頭脳は、まだ本当に快癒りきっていないのかもしれない)

大病をして、大熱を発し、人事不省に落ち入ったものや、乱心して恢復した者のある者が、過去の記憶を、一切忘却してしまうことがある。一切忘却しないまでも、その幾個かを、忘れてしまうことがある。薪左衛門の場合はその後者らしかった。

(何んの理由で、俺は、勘兵衛と、野中の道了で決闘したのだろう?)

思い出そう、思い出そうと、薪左衛門は焦心った。

「栞や」と、薪左衛門は、傷ましい声で云った。

「わしを野中の道了へ連れて行っておくれ。……あそこへ行ったら、わしの記憶が蘇生るかもしれないから」

躄り車に乗った薪左衛門と、それを引いた栞とが、野中の道了塚へ着いたのは、正午であった。春陽に浸っている道了塚は、その岩にも、南無妙法蓮華経と刻ってある碑にも、岩の間にこめてある土壌にも、花弁や花粉やらがちりばめられていた。この高さ二間周囲十間の道了塚は、いわば広々とした平野の中に出来ている瘤のようなものであった。しかし、この一見平凡の道了塚も、過去に多くの秘密を持っている薪左衛門にとっては、重大な記念物らしく、栞に助けられて、それを躄りのぼる彼の顔には、複雑な深刻な表情があった。