Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こうじん

行人

夏目 漱石

Leggi 行人 (こうじん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 224.801 caratteri · 452 schermate

Aozora Bunko

塀の内には夏蜜柑のような深緑の葉が瓦を隠すほど茂っていた。

院内では小使が丁字形の棒の先へ雑巾を括り付けて廊下をぐんぐん押して歩いた。雑巾をゆすがないので、せっかく拭いた所がかえって白く汚れた。軽い患者はみな洗面所へ出て顔を洗った。看護婦の払塵の声がここかしこで聞こえた。自分は枕を借りて、三沢の隣の空室へ、昨夕の睡眠不足を補いに入った。

その室も朝日の強く当る向にあるので、一寝入するとすぐ眼が覚めた。額や鼻の頭に汗と油が一面に浮き出しているのも不愉快だった。自分はその時岡田から電話口へ呼ばれた。岡田が病院へ電話をかけたのはこれで三度目である。彼はきまりきって、「御病人の御様子はどうです」と聞く。「二三日中是非伺います」という。「何でも御用があるなら御遠慮なく」という。最後にきっとお兼さんの事を一口二口つけ加えて、「お兼からもよろしく」とか、「是非お遊びにいらっしゃるように妻も申しております」とか、「うちの方が忙がしいんで、つい御無沙汰をしています」とか云う。

その日も岡田の話はいつもの通りであった。けれども一番しまいに、「今から一週間内……と断定する訳には行かないが、とにかくもう少しすると、あなたをちょいと驚かせる事が出て来るかも知れませんよ」