Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
こうじん
行人
Leggi 行人 (こうじん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 224.801 caratteri · 452 schermate
先へ梶棒を上げた三沢の車夫が余り威勢よく馳けるので、自分は大きな声でそれを留めようとした。三沢は後を振り向いて、手を振った。「大丈夫、大丈夫」と云うらしく聞こえたから、自分もそれなりにして注意はしなかった。宿へ着いたとき、彼は川縁の欄干に両手を置いて、眼の下の広い流をじっと眺めていた。
「どうした。心持でも悪いか」と自分は後から聞いた。彼は後を向かなかった。けれども「いいや」と答えた。「ここへ来てこの河を見るまでこの室の事をまるで忘れていた」
そういって、彼は依然として流れに向っていた。自分は彼をそのままにして、麻の座蒲団の上に胡坐をかいた。それでも待遠しいので、やがて袂から敷島の袋を出して、煙草を吸い始めた。その煙草が三分の一煙になった頃、三沢はようやく手摺を離れて自分の前へ来て坐った。
「病院で暮らしたのも、つい昨日今日のようだが、考えて見ると、もうだいぶんになるんだね」と云って指を折りながら、日数を勘定し出した。
「三階の光景が当分眼を離れないだろう」と自分は彼の顔を見た。
「思いも寄らない経験をした。これも何かの因縁だろう」と三沢も自分の顔を見た。