Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こうじん

行人

夏目 漱石

Leggi 行人 (こうじん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 224.801 caratteri · 452 schermate

Aozora Bunko

「どうして来るんです」と自分は聞いた。

自分が東京を立つ前に、母の持っていた、ある場末の地面が、新たに電車の布設される通り路に当るとかでその前側を幾坪か買い上げられると聞いたとき、自分は母に「じゃその金でこの夏みんなを連て旅行なさい」と勧めて、「また二郎さんのお株が始まった」と笑われた事がある。母はかねてから、もし機会があったら京大阪を見たいと云っていたが、あるいはその金が手に入ったところへ、岡田からの勧誘があったため、こう大袈裟な計画になったのではなかろうか。それにしても岡田がまた何でそんな勧誘をしたものだろう。

「何という大した考えもないんでございましょう。ただ昔しお世話になった御礼に御案内でもする気なんでしょう。それにあの事もございますから」

お兼さんの「あの事」というのは例の結婚事件である。自分はいくらお貞さんが母のお気に入りだって、そのために彼女がわざわざ大阪三界まで出て来るはずがないと思った。

自分はその時すでに懐が危しくなっていた。その上後から三沢のために岡田に若干の金額を借りた。ほかの意味は別として、母と兄夫婦の来るのはこの不足填補の方便として自分には好都合であった。