Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ちかいのまき

誓之巻

泉 鏡花

Leggi 誓之巻 (ちかいのまき) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7856 caratteri · 16 schermate

Aozora Bunko

頬のあたり太く細りぬ。真白うて玉なす顔、両の瞼に血の色染めて、うつくしさ、気高さは見まさりたれど、あまりおもかげのかわりたれば、予は坐りもやらで、襖の此方に彳みつつ、みまもりてそれをミリヤアドと思う胸はまずふたがりぬ。

「さ、」

と座蒲団差よせたれば、高津とならびて、しおしおと座につきぬ。

顔見ば語らむ、わが名呼ばれむ、と思い設けしはあだなりき。

寝返ることだに得せぬ人の、片手の指のさきのみ、少しく衾の外に出したる、その手の動かむともせず。

瞳キト据りたれば、わが顔見られむと堪えずうつむきぬ。ミリヤアドとばかりもわが口には得出ででなむ、強いて微笑みしが我ながら寂しかりき。

高津の手なる桃色の絹の手巾は、はらりと掌に広がりて、軽くミリヤアドの目のあたり拭いたり。

「汗ですよ、熱がひどうござんすから。」

頬のあたりをまた拭いぬ。

「分りましたか、上杉さん、ね、ミリヤアド。」

「上杉さん。」

極めて低けれど忘れぬ声なり。

「こんなになりました。」

とややありて切なげにいいし一句にさえ、呼吸は三たびぞ途絶えたる。昼中の日影さして、障子にすきて見ゆるまで、空蒼く晴れたればこそかくてあれ、暗くならば影となりて消えや失せむと、見る目も危うく窶れしかな。