Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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おつきさまのうた

豊島与志雄童話集

豊島 与志雄

Leggi 豊島与志雄童話集 (おつきさまのうた) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 162.569 caratteri · 336 schermate

Aozora Bunko

どこかで、小鳥の声がします。そして、空に赤い光がながれて、つめたい風がそよそよと吹いてきました。その時、桜の花がはらはらとちりはじめ、それと共に、たいへんよい匂いが、あたりにひろがってきました。

注射がきいたのでしょうか。たしかにそうでした。花がちるといっしょに、なんともいえないよい匂いが、あたりいちめんにただよって、息をつくのも苦しいほどでした。けれど、どうしたことか、花はしきりにちってやみませんでした。よい匂いといっしょに、白い花びらが、ひらひらひらひら、しきりにまいおちて、雪のように地面につもりました。そのきれいさ美しさは、何ともたとえようがありませんでした。

そして、朝日の光がさしてくる頃になると、その桜の木の花はすっかりちってしまい、緑の小さな葉もちってしまい、よい匂いもどこかに消えうせてしまって、あとにはただ、はだかの枯木が残ってるだけでした。

私は、その枯木をぼんやり見あげました。

正夫は、ふいに泣きだしました。

「小父さんに知らしておいでよ」と私はいいました。

正夫はかけだしていきました。

私は枯木にさわってみましたが、もうどうしようもありませんでした。