Classici giapponesi con furigana
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さけさかずきとっくり
酒・杯・徳利
山本 周五郎
Leggi 酒・杯・徳利 (さけさかずきとっくり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4047 caratteri · 9 schermate
青年は北向きの窓から外へ眼をやった。
丘の上には素晴らしい邸宅がある、南面した二階は硝子張りのサンルウムになっている、門から玄関までゆるく丘を迂廻して登る道はコンクリイトで、その左右は明るく広い芝生だ。建物の両端は応接間を兼ねた一家団欒の部屋になっているらしく、夕方になると風呂を浴びて寛いだ家族が集まり、笑いさざめきながらレコオドをかけたり、息子がヴァイオリンを弾いたりしているのが見える。
青年はふと、いま自分がその芝生の上へ、自分と妻と二人の子供を置いて考えているのに気付いた、そしてそのことに気付くと同時に、身も世もあらぬ羞恥と自嘲の念に襲われて、額に垂れさがっている髪毛を両手に掴みながら、卓子の上へ俯伏してしまった。
階下からは、泣きだした子供を妻の綾しているのが聞こえてくる、三年ばかりの間に二人の子を産んだ妻の声は、韻の深さを喪い艶をなくし、貧乏に圧し拉しがれて、弱々しく縮かんでしまった。
「夢だ、これは途方もなく長い夢なのだ」
青年は俯伏したまま呟く、
「眼を覚ませば、自分はやはり浦安町の廃屋にいるに相違ない、画師弘高を書きながら、絶望して、髪毛を掴んだまま机の上へ俯伏した、あの時から自分はこうやっているのだ。