Classici giapponesi con furigana
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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Leggi 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) di 林 不忘 (はやしふぼう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.547 caratteri · 27 schermate
雨の音、風の響きに混って、消えそうにして尾を引く甚右衛門の遠吼えは、この場合、下手な人間の舌以上に雄弁であった。それは、始めは何がなしぼんやりした恐怖、つぎに戦慄に似た不吉な予感、それから、こりゃあこうしちゃあいられねえといったような感じを冷水のように釘抜部屋の三人の背骨へ流し込むことができたからである。鮎肥る梅雨明けの陽気とはいえ、車軸を流さんばかりの豪雨と、今にも屋根を剥がしそうな大風の夜に、いとも哀れに泣き止まぬ犬の声は、犬が賢い名を取っているだけに、いっそう凄惨な余韻を罩めて、いかさま人の死にそうな晩だ、この濃い黒闇々の底にどれだけ多くのたましいがさ迷っていることか――あらぬことまで思わせるのだった。
が、犬は要するに犬である。その吠えるのはつまり勝手に吠えるのである。勘次が甚右衛門を抱いて抛り出した後は三人安らかに夢路につこうとした。
「甚右衛門犬、戸惑いしやあがって、いい世話あ焼かせやがったの。」
釘抜は蒲団から手を延ばして煙草を吸いつけながら、こんなことを言って笑っていた。が、その言葉の終らないうちに、何者か割れそうに雨戸の根にぶつかる音がした。