Classici giapponesi con furigana
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すずきもんど
鈴木主水
久生 十蘭
Leggi 鈴木主水 (すずきもんど) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.827 caratteri · 26 schermate
吊り加減の切長な眼のあたりを蒼ずませながら、素っ気ない切口上で、
「お話したいことがございます」
といった。主水は正坐して脊筋を立てると、
「どういう話だ」
と殊更強く聞きかえした。向きあうと、かならずこういう形になる夫婦なのである。主水は狐拳でもしているようだと思うことがある。
「このことは、お聞きにいれない約束になっておりますが、わたし一人の胸にためておけといわれても、重荷なばかりで、気持が鬱してなりませんから、それで、申しあげることにいたしましたのです」
うむ、と主水がうなずいた。
「先夜、お糸さまがおいでになりました」
主水はお安の顔を見た。
「噂には承知しておりましたが、ほんとうにお美しい方でした」
「どういう用向きで」
「舞扇を拾っていただいたお礼に、とおっしゃっていられました」
「礼などを言われる筋は、ないように思うが」
「お糸さまは、あなたに拾ってもらいたいばかりに、あなたの宿直の夜、扇を腰掛へお置きになったのだそうです。お糸さまは三河台の近くにお住いになっていたころから、あなたを慕っていらっしゃって、お忘れになる折もなかったのです。お上のお側に上る決心をなすったのは、もしか、あなたにお逢いできるかと、それだけが望みだったのだといっていられました。