Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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てつのしょじょ

鉄の処女

大倉 燁子

Leggi 鉄の処女 (てつのしょじょ) di 大倉 燁子 (おおくらてるこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 20.706 caratteri · 42 schermate

Aozora Bunko

私はある夜、看護人の隙を狙って病院を脱け出しました。

道案内も分らず、あてもなく歩いている中に、いつか夜が更けてしまいました。どこをどう歩き廻ったかよく記憶して居りませんが、ふと小屋掛の建物にまだ灯が見えているのを見て、疲労しきっている私は夢中でその中に飛び込んでしまいました。

それが今いるサーカスだったのです。人目を怖れ、弟の捜索の手を逃れるために大きな狒々の毛皮の中に姿をかくしているのです。南洋踊りだなどと出鱈目な踊りを踊る浅間しさも、その日を食べてゆくためには目を閉ぶって我慢しなければなりません。しかし鉄の処女だけは私から買って出た芸なのです。何も悪い事をしないのに、狂人として精神病院へたたき込まれるよりは、むしろ残忍極まる処刑でも、鉄の処女の方がまだしもだと思うので、弟に対する怨恨の薄らがないように、毎日あの恐しい鉄の扉の中に入るのです。彼は私の資産を横領したのみでなく、私の一生を葬り去ろうと企んだ、それだけだって許し難いのに、その上なお最愛の女をも奪ってしまっていたのです。

ふとしたことから、智恵子が弟の妻になっている事を知りました。