Classici giapponesi con furigana
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ぎんさんじゅうまい
銀三十枚
国枝 史郎
Leggi 銀三十枚 (ぎんさんじゅうまい) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 35.863 caratteri · 73 schermate
それも鍛練の一つじゃないか。何の私が怒るものか。また怒り切れるものでもない。第一お前はいつの間にか、絶対に私を怒らせないように、上手に仕込んでしまったではないか」
19
それは初冬のある日であった。私は書斎の長椅子にころがり、氈にふかふかと包まれながら、とりとめのないことを考えていた。彼女はその日も留守であった。本当に「彼女」というこの言葉は、彼女にうってつけの言葉であった。彼女と私とは他人であった。……三人称で呼ぶべきであった。
「物質的には食傷している。精神的には空腹だ。これが現在の生活だ。変に跛者の生活だなア」
私は氈を撫で廻した。
「この毛並の軟らかさ、朝鮮産の虎の皮、決して安くはなさそうだ。児玉町に住んでいた頃には、空想する事さえ許されなかった品だ。そいつにふかふかと包まれている。さて私よ。幸福かね?」
そこで私は私へ答えた。
「悲しいことには幸福ではないよ」
私は正面の壁を見た。勿論小品ではあったけれど、模写ではないマチスの本物が、似合の額縁に嵌められて、ちょうどいい位置に掛けられてあった。
「彼女が買って来た絵だろうか? それとも色眼の報酬として、某紳商の美術館から、かっぱらって来た絵だろうか? 本物のマチス、銀灰色の縁、狂いのない掲げ振り、よく調子が取れている。