Classici giapponesi con furigana
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ながさきのいちべつ
長崎の一瞥
宮本 百合子
Leggi 長崎の一瞥 (ながさきのいちべつ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 6773 caratteri · 14 schermate
第四日
運のわるいこと。今日は雲の切れめこそ見えるが、急に吹き降りの大粒な雨が落ちる。けれども、今日引こもっては、もう大浦、浦上の天主堂も見ずに仕舞わねばならない。其は残念だ。Y、天を睨み
「これだから貧棒旅行はいやさ」
と歎じるが、やむを得ず。自動車をよんで、大浦天主堂に行く。坂路の登り口に門番があり、爺さんが居る。これも、永山氏の御好意による名刺を通じると、爺さん
「日本のお方か、西洋のお方か、どちらへあげるね」
と訊く。どちらでもよいように永山氏はただ大浦天主堂御中という指名にされてある。私丁寧に答える。
「どちらでもよろしいのです。拝観さえ出来れば」
すると、爺さん、名刺を見ようともせず私にかえし
「拝観なら、私でええ。今、葬式で皆お留守だ。そこの右の方から入って見なさい。木の仕切りの中へ入りさえしなければ勝手に見なさってええ」
私共は顔を見合わせ、当惑して笑い合った。今度はYが訊く。
「勝手に拝見してわかりますか」
「――わたしはな、もう年よりで病気だから、説明が出来ませんじゃ、ここが苦しいから――だからただ見るだけ」
冬の日向ぼっこのような平和な愛嬌が爺さんの言葉に溢れる。