Classici giapponesi con furigana
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ずいひつ しほんたいへいき
随筆 私本太平記
吉川 英治
Leggi 随筆 私本太平記 (ずいひつ しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 56.947 caratteri · 114 schermate
宮内庁三階の仮宮殿南ノ間が私たちの控えで、そしてそこの廊下を右折した西ノ間がすぐ授与式にあてられていた。陛下のお椅子は、中央の衝立を後ろにすえられ、左へ寄って、総理大臣が勲記と黒塗の箱とを各受章者へ手渡す一卓をおいて佇立するわけ。――いただくときは一人一人が、氏名をよばれて控ノ間から進み入り、陛下への拝礼をして、総理の手からうけて退がるのである。――その時刻前に、宮内官の案内で、ちょっと、リハーサルの説明などがあった。――そのさい数学の岡潔氏が「最敬礼ですか」とただしたら宮内官のひとりが「いえ、そうと限ッておりません、お気もちのままで」といった。すべてはこの答えにふくまれているのどけさといってよい。
「なんですか、こう、小学生のときに返ったような気持ちですな」と、控ノ間で、陛下の出御を待つあいだに言っていたのも岡潔氏だった。付添いとして、奥さんをお連れになったのも氏お一人であったが、事実、嬉々たる童心の日に会したような容子であって「このことの旅行で、あなたの私本太平記も、つい三日ほど読みそこなっておりますよ。北畠顕家はもう都へ着いておりますか」などとしきりに雑談の花をさかせ、やがて、指名をうけると、飄として、式場の間の方へすすんでゆく姿など、いかにも免状式の日の、小学生そのものだった。