Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

Leggi 雑居家族 (ざっきょかぞく) di 壺井 栄 (つぼいさかえ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 140.106 caratteri · 283 schermate

Aozora Bunko

なぜなら、あれから十年たっているのに、その青年にまさると思う相手に音枝は出会えないではないか。

工場の防空壕は少しはなれた裏山にあった。警報とともに、みんなは一目散にそこへ向ってかけつけた。身軽で足の早い音枝は、何人もの人を追いこして、まっ先に防空壕へとびこむのが得意だったが、ある時ふと、自分の前をつえもなく足をもつらせて歩いている青年をみて、思わず手をさしのべ、手近の壕へ引きずりこんだ。それ以来彼女は、警報が出ると彼を迎えにゆき、手を引っぱって走った。左手を肩にかけておぶって逃げたこともあった。彼の心臓の高鳴りが、汗ばんだ背中をとおして音枝の胸にひびいた。壕まで足がのびず、かや原にふしたこともあった。そしてあるとき、あらしのあとの静けさのような中で、ふたりは将来をちかい、ふたりだけで戦争を憎んだ。最後の日、音枝は彼をさがしあぐね、ひとりで逃げた。彼はついに壕へやってこなかった。逃げおくれたのであろう。直撃をうけて火災をおこした工場はあらかた燃えつくし、彼の姿は十数人の犠牲者とともに生きながら煙となったのだ。その身につけたものの片りんさえも見つからなかった。