Classici giapponesi con furigana
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ざっき(いち)
雑記(Ⅰ)
寺田 寅彦
Leggi 雑記(Ⅰ) (ざっき(いち)) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 16.568 caratteri · 33 schermate
草花のある広場へはいってみるといよいよ失望しなければならなかった。歯磨楊枝をくわえた人、犬をひっぱっている人、写真機をあちらこちらに持ち廻って勝手に苦しんでいる人、それらの人の観察を享楽しているらしい人、そういう人達でこの美しい朝の広場はすっかり占領されていた。真中の芝生に鶴が一羽歩いているのを小さな黒犬が一疋吠えついていた。
最も呑気そうに見えるべきはずのこれらの人達が今日の私の眼には妙にものものしい行列のように見えた。大劇場のプロムナードを練り歩く人の群のような気がした。そして世の中に「閑な人」ほど恐ろしいものはないという気がした。自分がやはりその一人である事などは忘れてしまって。
裏の方の芝地へ廻ってみても同様であった。裁判所だか海軍省だかの煉瓦を背景にした、まだ短夜の眠りのさめ切らぬような柳の梢に強い画趣の誘惑を感じたので、よほど思い切って画架を立てようかと思っていると、もうそこらを歩いている人が意地悪く此方へ足を向け始めるような気がする。ゴーゴルか誰かの小品で読んだ、パンの中から出た鼻の捨場所を捜してうろついて歩いている男の心持を想い出した。