Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あめのやど

雨の宿

岩本 素白

Leggi 雨の宿 (あめのやど) di 岩本 素白 (いわもとそはく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2050 caratteri · 4 schermate

Aozora Bunko

やがて彼方此方、音色の違った、然し同じくやや高い鐘の音が、入交って静かに秋雨の中に響いて来る。じっと目を閉じて居たが、雨は如何にも落ちついて降り注いで居るようである。若い頃、利根川の畔り鹿島の宿で、土用明けのざんざ降りを食って、三日も無言の行を続けたことを思いだしたが、あの黒ずんだ、色彩の無い、常陸の国の川沿いの丘の宿に比べると、此処は雨もまた優しく懐かしい。といって、今度の旅は単に京都の秋の景色に浸ってだけ居るわけにはいかない。少しは調べたいもの、見たい所もあって、五六日は随分歩くつもりで、足慣らしもして来たのであるが、これでは愛宕、乙訓、久世、綴喜と遠っ走りは出来そうにない。然し雨なら雨で、近まの寺々の苔の色を見て歩いてもよい京都である。幸い博物館には、思いがけず海北友松の特別展覧会が開かれても居る。祇園の石段を上って、雨に煙る高台寺下の静かな通りを清水へ抜ける道筋も悪くはない。そんなことを寝たまま考えて居るうちに、いつか下の方でも起き出した気配で、滑かな優しい此の土地特有の女達の言葉が聞えて来た。