Classici giapponesi con furigana
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ゆきのよる
雪の夜
織田 作之助
Leggi 雪の夜 (ゆきのよる) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.221 caratteri · 23 schermate
一時はひっそくしかけていた鉄工所も事変以来殷賑を極めて、いまはこんな身分だと、坂田を苛めてやりたかったのである。が、さすがにそれが出来ぬほど、坂田はみじめに見えた。照枝だって貧乏暮しでやつれているだろう。
「なんぞ役に立つことがあったら、さして貰おうか。あしたでも亀ノ井ホテルへ訪ねて来たらどないや」
しかし、坂田は松本の顔をちらりと恨めしそうに見て、
「…………」
しょんぼり黒い背中で去って行った。
松本は寒々とした想いで、喫茶店のなかへ戻った。
「あの男は……」
どこに住んでいるのかなどと、根掘りそこのお内儀にきくと、なんでもここから一里半、市内電車の終点から未だ五町もある遠方の人で、ゆで玉子屋の二階に奥さんと二人で住んでいるらしい。その奥さんというのが病気だから、その日その日に追われて、昼間は温泉場の飲食店をまわって空壜を買い集め、夜は八卦見に出ているのだと言った。
「うちへも集めに来なさるわ」
おかしいことに、半年に一度か二度珈琲を飲んで行くが、そのたび必ずこんな純喫茶だのに置かなくても良いチップを置いて行くのだと、お内儀はゆっくり笑った。
「いくら返しても、受け取りなさらんので困りますわ」