Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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うんもへん

雲母片

宮本 百合子

Leggi 雲母片 (うんもへん) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2525 caratteri · 6 schermate

Aozora Bunko

「ここ」

私は、七歳で、真白い紙の端に墨の拇印をつけながら、抓んで半紙を御飯台の上に展げた。母は、傍から椎の実筆を執り池にぽっとりした! 岡でくるくる転して穂を揃えた。その筆を持って、小さく坐っている私の背後に廻った。

「さあ筆を持って。――そうじゃあなく、その次の指も掛けて、こう」

「こう?」

「そうよ。いいかえ。一番先にいろはと書いて見よう、ね。よく見ていて、次には一人で書くんだよ」

母は、生れて始めて筆を握った私の手を上から持ちそえ、

「ほら、点。ズーッと少しまげて、ちょん。これで片方。こっちは、やっぱり始めに力を入れて、外へふくらがして――ちょん。」口でいいながら、三寸四角位の中に一ついの字を書いた。

指の覚えもなく、息を殺して白い、春の光に特に白い紙の面を見つめていた私は、上から自分の手を捕まえた母の力がゆるむと、溜息をついた。

黙って字を眺め、首をねじ向けて後に中腰をしている母の顔を仰見た。

母は、私のおかっぱの頭越しにやはり字を見、

「――変な形に出来たこと」と独言した。

「さあ、今度は百合ちゃんの番。書いて御覧。下手でもいいのよ」

私は、体じゅう俄に熱くなり、途方に暮れながら、被布の房を揺すって坐りなおした。