Classici giapponesi con furigana
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でんしゃのみえないでんしゃどおり
電車の見えない電車通り
宮本 百合子
Leggi 電車の見えない電車通り (でんしゃのみえないでんしゃどおり) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 5599 caratteri · 12 schermate
車掌は背広のひどく背の高い若い男で、灰色っぽいソフト帽をかぶっている。これにも、さっきむこうへ行ったのにも白い警官が顎紐をおろしてのりこんでいるのであった。
「――東京駅まで……二枚でしょう?」
黒い書類入れを側において、年とった男が回数券を出してきろうとすると、
「今日は一枚です……のりかえなければ五銭均一ですから」
俄車掌は、動揺のためのめるまいと長い両脛でうんと踏張り、自分の尖った鼻を腰かけている相手の帽子の下へ突っこみそうに背をかがめ、間のびのした形で腰にぶら下っている鞄の中から釣銭をさがし出す。よほど緊張していると見え、その車掌は客に切符をうる段になると、目ばたきをやめ口をあいて、その仕事に従事するのであった。
三つまたの大通へかかったとき、これも臨時ではあるが、遙に馴れている運転手が、
「左! 左を見て!」
とハンドルを握ったまま力をいれて早口に注意したが、俄車掌がやっとステップに出た時、とうにバスはその危険なところを横切ってしまっている。――
神田に向う電車通りに出ると、空円タクがふだんの倍ほど通っているきり、平穏である。むこうから一台、ワイシャツの前にネクタイをたらし、カンカン帽の運転手に運転された電車が来た。