Classici giapponesi con furigana
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きりのなか
霧の中
豊島 与志雄
Leggi 霧の中 (きりのなか) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.920 caratteri · 40 schermate
が傲慢なものとなるに随って、彼自身は宙に浮いてしまったのだそうである。そんなこと、正夫にはよく分らなかったが、木原さんはしんみりと話してきかして、それから更に声をおとして、だから、精神が宙に浮いていたから、酒に酔ってもいたろうけれど、船から海に落ちるようなことになったのである……。その声があまり静かで、宙に漂っているようだったので、正夫はうっかり、率直に独語した、いいえ、お父さんは自分で海に飛びこんだんだ!
ちょっと、しいんとした。それから突然、大きな手が痙攣的に正夫の肩をつかみ、怒った声で、ばか、ばかなことを云うな! 木原さんは怒りながら泣いていた。正夫は呆気にとられた。父が自殺したって、それがなぜいけないんだ。海に飛びこんで消えてしまったのは、何かしら清らかで美しい。写真と位牌といろんながらくたと、そして花ばかりの、あの祭壇は、人の気持ちをすっきりさせるじゃないか。悲しいのは、父がいなくなったということだけだ。それと自殺とは別なことだ。そう思ってる正夫に、木原さんはなお、とぎれとぎれに云ってきかせるのだった。そんなことを考えちゃいけない、お父さんは誤って海に落ちたんだ……。