Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あおいひも

青い紐

田中 貢太郎

Leggi 青い紐 (あおいひも) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 5592 caratteri · 11 schermate

Aozora Bunko

何時も話題を多く持っている壮い新聞記者の話したことが浮んで来た。そこで彼はそのステッキを売っていると云う老婆に興味を感じて、そこへ頭をやったとこで時間のことが気になって来た。彼はカップに手をやったなりに顔をあげた。

時計は十二時に十五分しかなかった。彼は己の物たりなさを充たしてくれる物は、上野の広小路あたりにあるような気がした。彼はすぐ広小路まで帰ろうと思った。そう思うとともに、彼の頭の一方に雨の日の上野駅の印象が浮んだ。その印象の中には赤い柿の実が交っていた。彼はその印象をちらちらさしながら勘定のことを考えた。

「おい、勘定」

カップにすこし残っていたソーダ水を割ったウイスキーを口にしながら上野駅の印象の続きを浮べてみた。雨に暮れかけた上野駅では東北の温泉町からいっしょに帰って来た六七人の者がばらばらになって帰りかけた時、随筆家として世間に知られている親しい友人から呼び止められた。随筆家の友人は土産にと持って来た柿の籠をいっしょに持って往って置いてくれと云った。

(おい、けしからんことを云うなよ)

と云って笑ったことを思いだした。随筆家の友人と話題を多く持っている壮い新聞記者が、糠雨のちらちら降る中を外の方へ歩いて往った姿も浮んで来た。