Classici giapponesi con furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Leggi 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 162.593 caratteri · 325 schermate
紀代子は着物を着ると、如何にも良家の娘らしかった。(此の女は俺の母親が俺の学資を作るために、毎晩針仕事をしたり近所の人に金を借りたり、亭主に高利の金を借りたりしていることは知るまい。いや、俺が今日此処へ来る前に漬物と冷飯だけの情けない夕食をしたことは知るまい。無論あとでこっそり母親が玉子焼を呉れたが、これは有難すぎて咽喉へ通らなかった。俺の口はしょっちゅう漬物臭いぞ。今も臭いぞ。それを此の女は知るまい。此の香水の匂いをプンプンさせている女は知るまい。俺の母親は銭湯の髪洗い料を倹約するから、いつもむっと汗くさい髪をしているぞ)
豹一はふっと泪が出そうになった。が、その眼を素早くこすると、また考え続けた。(この女は俺が坐尿したことを知ったら、もう俺と歩きはしまいだろうな)だからこそ、この娘を獲得することは自尊心を満足さすことになるのだと、豹一は漸く紀代子と歩いている自分の役割に気がついた。
(何か喋らなければならない)
豹一は急に周章て出した。が、どんなことを喋って良いか分らなかった。恋愛小説など読んだことがないのである。獲得だと大それたことを考えてみたところで、それがどんな実際の言動を意味しているものかも分らなかったのである。