Classici giapponesi con furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Leggi 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 162.593 caratteri · 325 schermate
だから目先のことだけ考えれば、どうせうけ出しも出来ぬ質札が金になるときけば有難がってやって来るだろう。その足許を見て二束三文で買いとってやるのだと、随分前から安二郎は此の商売をやりたがっていたのである。
ところが現在の家ではさすがにその商売は出来なかった。高利貸めいてひっそりと奥深く、見知らぬ人の出はいりにもじろりと眼を光らせねばならぬしもたやでは出来ぬ商売だった。そんなところへ安二郎の言葉を借りて言えば、「運良く隣の家が空いた」のである。
東西屋も雇わず、チラシも配らず、なんの風情もなくいきなり店開きをしたのだが、もうその日から、質札を売りに来た。ベルの音が隣の家まで通ずる仕掛になっている。安二郎はのっそりと腰を上げて廊下伝いに新店の二階へ出て、階段を降り、夏の土用以外に脱したことのない黒い襟巻を巻いた顔をぬっと客の前へ出すのだった。じろりと客の顔を見て椅子に腰を掛け、客には坐れとも言わずに質札を虫眼鏡で仔細に観察してから、質屋の住所と客の住所姓名を訊く。終ると、「金は夕方取りに来とくなはれ」と無愛想に言って、腰を上げると、取つく島のない気持でぽかんとしている客の顔を見向もしないで階段を上り、再び廊下伝いにもとの部屋に帰ってしまうのである。