Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Leggi 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.621 caratteri · 25 schermate

Aozora Bunko

「喜三次ぬし、それは、いけねえ」

「いけねえことは、よく知っている。さっきからつくづく見ていたが、だいぶようすが変っている。あの船になにかあったのにちげえねえが、そうと知っては見すごしても行かれめえ。ちょっと、ようすを見に行こう。声をかけるだけのことだから、たいして手間もくうめえ。ともかく、船を寄せてみろ」

波のりぶねというぐあいにぼんやりと漂っている遠島船の腹へこちらの舳を突っかける。

喜三次が舳に立って、

「お船手、お船手。……おうい、船の衆」

と、声をかけたが、なんの返事もない。

「おウイ、船頭衆、お楫……だれもいねえのか」

伊豆田浦岬の地かたから二十五六里。その沖に浮いてる船にだれもいないかは、チトおかしい。が、そうとでも言うほかはない。帆をダラリとさげたまま人ッ子ひとり姿が見えず、しんとしずまりかえっている。

「いよいよ妙だ。この船には人ッ子ひとりいねえとみえるぜ。……いってえ、どうしたというんだろう」

餌取の平吉、あまり物怖のしないほうだから、船胴から腰をあげて、

「おれが、ちょっくら、ようすを見てくるべえ」

「そうだな、見て来てくれろ」

「遠島船め、手間をかけやがる」