Classici giapponesi con furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Leggi 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.435 caratteri · 27 schermate
眼玉も動かせぬというはこのへんの混雑をいうのであるべし。
気が遠くなるような思いで待っているうちに楽屋のほうで波音を聞かせる。大波小波、狂瀾怒濤。小豆をつかって無闇に波の音を立てるもんだから、見物の一同は船酔いするような妙な気持になる。
しょうしょう吐気が来かかったころに、ボーボーと鯨船で吹く竹法螺の音が聞え、それがきっかけで、白黒だんだらの鯨幕がさッと取りはらわれる。
鯨には嘘はない。
まるで五百石船ほどもあろうと思われる黒いのっぺらぼうなやつがごろんと転がっているから、見物は夢中になって口々いっせいに、うわアと感嘆の叫び声をあげる。その声で小屋も揺らぐかと思うばかり。
鯨の背中には、先刻のべたような服装の縹緻よしの女口上つかいが桃割にさした簪のビラビラを振りながら、いい声で鯨の口上。
「東西、さて、このたびご覧に供しまする黒鯨。藍絵、錦絵、三枚つづき絵にて御覧のかたはありましょうが、生きた鯨が江戸に持ちこされたはこれが最初。当地は日本四十五州の要所。将軍さまのお膝元とて、名だたる見世物も数あるなかに、これこそは真の眼学問。見ぬは恥、見るは一生の宝。