Classici giapponesi con furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Leggi 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.435 caratteri · 27 schermate
不浄からの帰途、桟敷の嶺をつたいながらなにげなくヒョイと飾場のほうを見ると、どうしたというのか、鯨は影も形もない。白い砂があるばかり。
夢を見ているのだと思った。トロンとした眼をひっこすって息をつめて、つくづくともう一度見なおしたが、酔っているのでも夢を見ているのでもなかった。なんど見なおしても鯨はいないのである。
げッ、と驚いて、足もともしどろもどろ。息も絶えだえに丸太梯子をよろけあがって三階のあがり口へ首だけ出すと、
「親方、たいへんだ。鯨が……」
馬鹿にするねえ、で、誰ひとり本当にしない。
冗談なんか言っているセキはありゃしない、嘘だと思うなら行って見なせえ、たしかに鯨はいなくなっているンです。やい、よだ六、かついだら承知しねえぞ、半信半疑で六兵衛が先に立ち、一同金魚のうんこのようにつながって、ゾロゾロと飾場までおりて来て見ると……
鯨がいない。
一同、あッ、と言って腰をぬかした。
それにしても、誰がなんの必要があって鯨などを盗んで行ったのだろう。それはまアいいとして、秀の後でよだ六が不浄へおりたのは、その間、時間で言えば、ほんの十分。その短い間に六間半もある鯨をどんな方法で持って行ったのだろう。