Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Leggi 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.783 caratteri · 22 schermate

Aozora Bunko

越後信濃は今年は不作で、だいぶ暇だそうだからの」

と、吐きだすようにいう。さすがに、むしゃくしゃしているものと見える。

「いよう」

と、入口で威勢のいい声がする。

みなが、なんとなくぞッとして、そのほうへ振りかえってみると、顎十郎が竿をかついでぬうと立っている。

ちびた袷をずっこけに着流し、そんなふうにして立っているところは、いかさま堕落した浦島太郎のようである。

庄兵衛は、たちまち青筋を立て、

「野放図な、いよう、とはそもそもなんであるか。……見れば屋敷の中に釣竿なんぞかつぎこんで、これ、ちとたしなまッせい」

こちらのほうは立ったままで、

「相変らず、ごろごろと、雷の多い年ですな」

といって、けろりとした顔で、

「時に叔父上、潮ざしがいいから、釣りにでも出かけましょう。すこし汐風にでも吹かれて、気保養をなせえ」

庄兵衛は、いよいよ苦りきって、

「この御用多に、釣りなどと緩怠至極な」

顎十郎は耳にもいれず、

「叔父上の口癖じゃあねえが、そもそもこの魚釣りというのには三徳がある。……だいいちに気を養い、第二にせっかちがなおり、第三に薬罐あたまに毛が生える。……たった一人の叔父上に、せめて一日、気保養をさせたいと、こうして気をもんでいるわっし。