Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Leggi 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.783 caratteri · 22 schermate

Aozora Bunko

という網船の横丁の溝の中で死んでいた。……こんな具合に、つぎつぎに五人まで同じような死にかたをしている。

その傷は極めて異様なもので、左の耳の後から咽喉仏の方へ偃月形に弧を描いて刎ねあげられている。ひといきに頸動脈をふかく斬られ、斬られたほうは、恐らくあッというひまもなく即死したであろう。

どの死体にも判で捺したように、見事な鎌形の傷があることと、なにひとつ所持品が失われていないことが、この事件の特徴であるが、その傷口を、かれこれ照合してみると、場所といい、大きさといい、また、鎌なりのその形もいずれも寸分のちがいはない。

最初は、傷跡が示すとおり、鎌で掻き切って殺したのだという説がたった。やりすごしておいて、後から突然におどりかかり、刃先を咽喉から耳のほうへひいたのだというのである。一応もっともな意見だ。

ところが、傷口を仔細に調べてみると、傷口は横側のほうが浅く、咽喉仏へ行くほど深くなって、とたんに顎のほうへ刎ねあげられている。後から襲いかかって手許へ引いたのならば、こんな傷は出来ぬ筈である。

そればかりではない、なお、入念に改めてみると、鎌形に咽喉を掻き切るまえに、切尖がすこし戦いだような、すこし切尖を違えたような、小さな不思議な掻き傷があって、それからいきなり深い新月なりの傷がはじまるのである。