Classici giapponesi con furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Leggi 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.248 caratteri · 27 schermate
左きき
「こりゃ、ご書見のところを……」
「ふむ」
書見台から顔をあげると、蒼みわたった、鬢の毛のうすい、鋭い顔をゆっくりとそちらへ向け、
「おお、千太か。……そんなところで及び腰をしていねえで、こっちへ入って坐れ」
「お邪魔では……」
「なアに、暇ッつぶしの青表紙、どうせ、身につくはずがない。……ちょうど、相手ほしやのところだった」
「じゃア、ごめんこうむって……」
羽織の裾をはね、でっぷりと肥った身体をゆるがせながら、まっこうに坐ると、
「御閑暇なようすで、結構でございます」
こちらは、えがらっぽく笑って、
「おいおい、そんな挨拶はあるめえ。……雨が降りゃア、下駄屋は、いいお天気という。……おれらは忙しくなくっちゃ結構とは言わねえ」
「えへへ、ごもっとも。……どうも、この節のようじゃ、ちと、骨ばなれがいたしそうで……」
「これ見や、捕物同心が、やしきで菜根譚を読んでいる。……暇だの」
引きむすぶと、隠れてしまいそうな薄い唇を歪めて、陰気に、ふ、ふ、ふと笑うと、書見台を押しやり、手を鳴らして酒を命じ、
「やしきでお前と飲むのも、ずいぶんと久しい。……まア、今日はゆっくりしてゆけ」