Classici giapponesi con furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Leggi 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9707 caratteri · 20 schermate
川風
「阿古十郎さん、まア、もうひとつ召しあがれ」
「ごうせいに、とりもつの」
「へへへ」
「陽気のせいじゃあるまいな」
「あいかわらず、悪い口だ。……いくらあっしが下戸でも、船遊びぐらいはいたします。……これがあたしの持病でね。……まア、いっぱい召しあがれ」
川面から映りかえす陽のひかりが屋根舟の障子にチラチラとうごく。
むこうは水神の森。波止めの杭に柳がなびき、ちょうど上汐で、川風にうっすら潮の香がまじる。
顎十郎のとりもちをしているのは、神田の御用聞のひょろ松。その名のとおり、麹室のもやし豆のようにどこもかしこもひょろりと間のびがしていて、浅黒い蔭干面が、鷺のようにいやにひょろ長い首のうえにのっかっている。長いことにかけては、顎十郎の顎と好一対。
酒と名のつくものなら、金鯛にも酔う男。それが、屋根舟で、むやみと斡旋をしようというのだから、これには、なにかいわくがありそう。
矢つぎばやの追っかけ突っかけで、顎十郎、さすがにだいぶ御酩酊のようす。
ぐにゃりと首を泳がせて、
「ときに、ひょろ松、お前、今年、いくつになる」
「へえ、三十……に、近いんで」
「お前の三十にちかいも久しいもんだ。