Classici giapponesi con furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Leggi 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 18.022 caratteri · 36 schermate
もかけないいい仕合せ。明日、湯島天神の境内であの女に逢ったら、よくお礼を言ってやる。……それはそうと、坊さんも祐堂和尚ほどになれば大したもんだ。今頃は不知森で大往生をしたのだろうが、いながらにしてちゃんと水野のことを見抜いていた。……これでおれの手に『五』と『大』の二字が手に入ったから、残るところは僅か一字。……いったい、どんなやつの手にあるのかしらん。しかし、あせってもしょうがねえ、そのうちにかならずあたりをつけて見せる。……こうして、下人が足を踏みこんだことがない吹上御殿へ飛びこんだのだから、どんなふうになっているものか、ついでのことに見物して行ってやろう」
五つの訴状を胴巻の中に入れ、楓の木の間づたいにブラブラと築山のほうへ歩きだす。
築山の裾の林をぬけると、広々とした芝生になり、その向うは水田で、水田の北と南に小さな小山が向きあっている。
「なるほど、あれが音に聞く木賊山と地主山か。……このようすを見ると、まるで山村。……お廓うちにこんなところがあるとは思われない、いや、大したもんだ」
広芝の縁をまわって木賊山の裾のほうへ入って行くと、そこには見上げるような奇巌怪壁が聳えたって二丈あまりの滝が岩にかかり、流れは林や竹藪の間をゆるゆるとうねりうねって、末は広々とした沼に注ぎこんでいる。