Classici giapponesi con furigana
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かぜ
風
壺井 栄
Leggi 風 (かぜ) di 壺井 栄 (つぼいさかえ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 38.702 caratteri · 78 schermate
「あのう、貸家のことでございますが、三宿というところの、百九十六番地にあります、六畳と三畳の貸家を、お借りできないでしょうか。」
その馬鹿ていねいさがおかしかったのか、にやりと笑った男は、
「お貸ししますがね、御家族は?」
「あのう、夫婦ふたりなんです。」
茂緒は自分でもわかるほど、質屋の親父の前であかくなっていた。
「これまで、どちらに?」
「あのう、田舎にいまして、いまは深川の兄の家におりますけれど。」
「新婚ですか。」
「はあ。」
「お勤めですか。」
「はあ。」
どこにときかれたら、新聞社だといえと修造に教えられていたのだが、そこまできかずに家主は承諾した。家賃十五円の、敷金二つをおさめると、茂緒のがま口は軽くなった。もう田舎へ帰ることもできないのだ。受取を書いてもらいながら、しかし彼女の気もちははずんでいた。とにかく、生まれてはじめて、自分の家ができるということはすばらしかった。それを思うと、二十五年のこれまでの田舎の生活が、閉ざされた箱の中でのそれのように思えて、ひろびろとした未来が、今ここにひらけてくるような思いがした。茂緒は、もうその家に住んで、まっさきにする仕事のことを考えていた。