Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しょくよく

食慾

豊島 与志雄

Leggi 食慾 (しょくよく) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9672 caratteri · 20 schermate

Aozora Bunko

野口が帰ってきても、私はただ白痴のような微笑を浮べてるきりでした。木村さんは、凡てを告白しよう、そして出来ることなら、二人結婚しよう、とまで云いました。ひどく煩悶して窶れていました。とげとげしたところさえ出て来ました。そして一日おいて、後のことを約束して、東京へ帰ってしまいました。私はどんな約束でもしました。意志なんかは……約束を守る意志さえも……少しもありませんでした。そして木村さんが立去ると、私の白痴のような微笑は、とめどもない涙に代りました。泣いても泣いても、涙がつきませんでした。いろいろ問いつめられて、私は野口に一切のことを告白しました。少しも気の籠らない、それでいて涙にぬれた、ばかげた告白でした。けれど、おう、その時、私は野口の、極度の軽蔑の眼付に出逢いました。「僕はお前を自由に放っておくことが、お前の精神力を引立たせる仕方だと思っていた。精神力さえ盛んになればよいと考えて、じっと眼をつぶっていたのに……。」そう云いながらも、彼の眼には、崇高だとも云えるほどの軽蔑の色が溢れていました。私は心の底まで凍りつく気持がしました。もう駄目だ、私と野口との間は、どんなことをしても凡て駄目だ、ということをはっきり感じました。